明治36年創業の呉服屋「蔵島屋」4代目の上田與一郎さん。幼い頃は着物に興味が無かったものの、日常の中に当たり前の存在として着物があったことで、先入観や違和感を感じずに今に至っているという。それと同じような感覚で、上田さんにとっては音楽もそのような存在なのだとか。昔を振り返りながら話してくれた音楽との付き合い方、子供への想い、残したい環境、真剣に遊ぶ姿勢…そこには、自分に対しても人に対しても無理強いはせず、あくまで自然にモノや人と接していく上田さんの“愛の形”と、人から慕われる人柄が滲み出ていた。
●今日も上田さんは着物を着ていらっしゃいますが、普段から?
上田:元々、祖父も父も日常的に着てたから、着物への先入観は全く無かったけど幼い頃は興味も無かったんですよ。僕には子供が3人いるんですが、日常的に着物を着るようになったのは、長女が産まれた時からです。
●ご自身の幼い頃と同じように、日常的に着物を感じられる環境を…という感じで?
上田:そこまで難しく考えてなかったかもしれない(笑)。ちょっと格好つけて言うと「この子のために自分は何が出来るか」…って考えて、他にも色々と考えて行動しようと思ったこともあるんです。その中のひとつが日常的に着物を着ることだった。自分の子供に「お前は後継ぎ」とは言ってないけど、将来の選択肢のひとつとして「呉服屋」というものもある…それを選ぶ日があるのだとしたら、僕がそうであったように、家族が日常的に着物を着ていることも、子供達にとって何かしらの意味が出来ていくのかな…って。
●上田さんの着物姿は親としての“愛の形”のひとつでもあるんですね。さて…この企画は皆さんの音楽との繋がりもお訊きしているのですが。
上田:本当にかじった程度ですが、昔、ギターを弾いてたんです。中学生の僕にギターと麻雀を教えてくれた従兄がいまして(笑)。最初に買ったのはアコギで、勉強もせずにギターばっかり弾いてた。そしたらある日、ついに親父がキレて…家の前の電信柱にアコギをバーンッってぶつけて。
●エェェェェェェっ!!!!! ドラマのワンシーンみたい(笑)。
上田:ね?(笑)。でも、そんな簡単にアコギは壊れず…そのままの勢いでギターの裏側を足でドーンッって踏んで穴あけちゃって。その結果、ギターは壊れまして…その頃、楽器を触れるヤツが一部屋に集まってみんなで弾いて遊んでたんです。でも、僕はその日から突然、楽器が無くなってしまったわけで…仕方ないから、壊れたギター抱えて、穴の部分にダンボール貼って弾いてた(笑)。
●………ダンボール貼っても音は出ないですよね?
上田:その通り!でも弾いてましたね…これが僕と音楽の最初の出会いというか…今でも忘れられない衝撃的な出来事(笑)。その後は、高校生の時にお許しが出て(笑)、エレキを買ってもらった。バンドを組んでたわけでは無く、個人的に弾いてたんですが、高校3年生のときに文化祭でバンドをやることになって。
●もちろんパートはギター?
上田:それが…ボーカル(笑)。当時の商店街の中にスタジオがあって、学園祭に出るために友達のバンドがスタジオに入ってたんです。で、家が近かったから「覗きにきたら?」って誘われて、手ブラでスタジオに行ったらLOUDNESSを演ってて…ウズウズして「ちょっと貸してみろ!」と……その時のボーカルからマイクを奪いまして(笑)。
●そのまま本番まで…という「ボーカル強奪事件」ですか?(笑)。
上田:はい…正式なメンバーだったボーカルの人には非常に悪いコトをしたな、と思ってます(笑)。人生でバンドとしてステージに立ったのは1回だけだけど、本当に楽しかったし、凄く面白かった。それまで、あんまり目立つタイプでは無かったけど、その時から目立ち始めたというか…目立つのが好きになった(笑)。ギターは、大学に入る時に弟にあげたけど、音楽を通して遊ぶってことはずっと好きですよ。
●学園祭のときに「音楽で遊ぶ」ってことの気持ちよさを知ったのかもしれないですね!
上田:実は、小さい頃にエレクトーンを習ってたこともあって、身近に音楽があるのが当たり前の環境だったんです。それ以外でも、一応ディスコ世代だから(笑)、当時流れてたモノは違和感なく聴いてたし…何と言うか、生活の中に音楽があるのは当たり前で“あって当然、無いと不自然”って感覚なんでしょうね。
●着物と同じように、音楽も上田さんにとっては先入観なく自分の中に入ってきたモノなんでしょうね。
上田:元々、音楽は好きだから、ジャンル問わず誘われるとライブにも行きますし、純粋に楽しめるんです。前回、このインタビューに登場した竹林堂の山崎さんに誘われて矢沢永吉も行きましたよ(笑)。他には、小さめのライブハウス的な場所や、普段は仕事してる人が演奏してたりする場所も好きで。その場にいる人たち同士でセッションしたり…生の音楽が鳴ってるっていうのが好きなんだと思う。随分前だけど、そういう店で呑みながら楽器を鳴らしてて、そのままの勢いで他の店に切り込んでいった時もあったな…迷惑なヤツらですよね(笑)。
●アハハハハ! 流し的な感じで捉えていただければ(笑)。学園祭然り、ライブ然り、流し的な話然り(笑)、上田さんは「遊び」と「音楽」が結びついてる。
上田:僕のモットーとして「真面目に遊ぶ」っていうのがあるから、ふざけて遊んでても面白くない。好きなモノで遊ぶ以上、真剣に真面目に…それが良いんだか悪いんだかって説もあるけど(笑)。今後は、そのモットーを貫きながらも、仕事の面で店内の男物スペースをもっと充実させたいんです。
●上田さんが日常的に着ていらっしゃるから、相談もしやすそうですね。
上田:まずは自分が本当に良いと思うモノ、欲しいと思うモノを充実させていきたい。その上で、富山の男性が「着物を着たい」と思った時に、まず覘く“男物なら蔵島屋”という店にしたいんです。その時にアドバイスも含め、その気持ちに応えられるだけの品揃えも持っていたいと思っています。
Interview:ema iwata

住所:富山市中央通り1-5-12
TEL:076-493-3929
営業時間:9:00~18:30(水曜休)
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