イタリア製のスーツを中心に、質にこだわった衣類が並ぶ「アルバーノ」。茶を基調にしたシックな店内、その空間を彩るように流れる心地良い音楽…カフェに来たのかと思ってしまうほど、ゆったりとした時間が流れている。着物を扱っていた時代から数えれば創業100年以上、洋品店になってからは3代続くこの店で、洋服と音楽が互いを演出しあっているような空間作りをしているのが、3代目の長谷川祐一さん。自他ともに認める「音楽好き」の長谷川さんが目を輝かせながら語ってくれた数々の話には、コミュニケーションを大切にする姿勢とともに、音楽と洋服への純粋な愛情が溢れていた。
●長谷川さんは3代目ですが、幼い頃から洋服屋さんになるって思っていらっしゃったんですか?
長谷川:一応、長男なんで昔からそのつもりでいました(笑)。そのために東京を中心に4年ほど修行に出て27~28歳の頃に戻ってきて継いだんです…早いもので、もう20年くらい経ちますね。
●今は、イタリアの服を中心に扱っていらっしゃいますよね?
長谷川:昔から、うちの店は“スーツ屋”というのが核としてあるんです。その上で、僕の代になってからは「イタリアの服にこだわっていく」と自分で決めてやってきました。数年前からレディースも扱っていますが、とにかくイタリアの質の良い服に惹かれてるんですよ。
●具体的にはどういった部分に強く惹かれてるんですか?
長谷川:イタリアの服っていうと、デザイナーやモードの華やかな部分もありますけど、それとは別の部分ですね。職人が誰にも真似できないように仕立てた芸術品というか。そういう本物の服は、シンプルでも美しくて、身につけるだけで輝いて見える…そういう点に惹かれるんです。
●お店の雰囲気や空間に合った音楽を流すスタイルは昔からなんですか?
長谷川:僕の代になってからです。店内も改装しましたし、親父の代のときは有線が流れていたような記憶もあるんですけど、音楽に関してもオーディオを持ち込んで気分やお客様の雰囲気に合わせて選曲して……趣味を仕事でも活かすというか(笑)。
●レジの後ろに、洋服屋さんとは思えないほど大量のCDが収納されていて驚きました!
長谷川:店を改装したときに、CD棚も作ったんですけど…僕の中では至って普通の感覚で作ったんです(笑)。一時期、今の店の2階でバッグを販売しつつ、ミュージック&カフェって感じの店もしてたんですよ。ジャズ喫茶的な感じで、3~4曲ずつCDやレコードを変えて、いい音でじっくり聴かせる店。今持っている音源の中には、その時に買ったものもあります。
●今、お店にあるCDだけでも数千枚はありそうですけど…。
長谷川:コレクターではないから、数えたことはないけど…聴ければ質にはこだわりません(笑)。本当は、レコードが好きなんですけどね…。
●音の感じも違いますもんね!
長谷川:そう。音の深みや温もりが最高だし、片面が20分くらいだから集中して聴けるんですよ。でも、CDの方が色んなジャンルも手に入りやすいし、安いから…東京に行ったときにまとめ買いしてます(笑)
●長谷川さんの“まとめ買い”って、何だかスゴイ枚数の気がして…聴く時間を作るのも大変そう(笑)。
長谷川:そんなことないですよ(笑)。それに、まとめ買いしてきたモノをストックしといて、新しい音に日々触れる…新しい音との出会いが好きなんです。ココロを揺さぶられるような音楽との出会いを常に探してるし、一生探していたい。
●かなりの数の音を知っていらっしゃる長谷川さんですが…特に大切に思っている曲やアーティストっていうと?
長谷川:僕は凄く雑食で、好き嫌いせずに何でも聴くから…難しい(笑)。中1くらいで友達の影響から音楽にハマっていったときは、ビートルズも聴いたし、初めて自分のお金で買ったのはディープ・パープルだった気がするし…だから、ルーツはロックなんだろうけど。その中で、ここまで“聴く”ってことにハマっていった原点かもしれないって思ってるのは、ヴァン・モリソンというアーティスト。
●ヴァン・モリソンの音楽と出会ったのはいつ頃なんですか?
長谷川:結構遅くて…僕が30歳くらいのときかな? “孤高のアーティスト”って言われたりもしてますけど、『オーディナリー・ライフ』というアルバムを店で試聴したとき…本当に言葉を失ったんです! 国民性なのか…アイルランドのミュージシャンは、どこか哀愁があってスピリットを感じる。ヴァン・モリソンを聴くときは、ついつい正座してしまうほどです!
●イタリアの服について話すときと、ヴァン・モリソンについて話すときの長谷川さんって、どこか通ずる部分があって…。長谷川さんの中で、洋服を薦めるのと音楽を薦めるのは、似た感覚があるのかもしれないですね。
長谷川:確かに似てますね! 音楽にも洋服にもそれぞれにコダワリがあるけど共通してるのは“自分が本当に気に入ったモノで、あまり人に知られていない”ってトコロ(笑)。この商売だから成り立ってるのかもしれないけど、毎日好きなものに囲まれて働くことが出来てる。もちろん洋服を売ることが仕事なんだけど、その過程でお客様と話もするでしょ?
●そうですよね。そのときに音楽の話も出たり? 長谷川:ありますよ! 常連さんが来るとすぐに、店内で流してるモノをその人が好きな音楽にチェンジしますし! 僕自身もそうなんだけど、好きな服を試着する時は好きな音楽を流して映画の主人公になりきるというか。ファッションはナルシシズムであり、現実逃避だと思うから、そうなれる空間を作っています。
●「アルバーノ」は、お客様にとって心地良い場というのはもちろん、長谷川さんにとっても“大切なモノ”が生活や仕事に上手く重なっている場なんですね。
長谷川:そんな気がします。こういう形で音楽を流していることで、お客様とも接点が増えて、人間関係を築きながら商売が出来ていると思うし。服を扱いながら、お客様と音楽の話が出来る…僕が言うのもおかしいですけど、例えそれが商売に繋がらなくても(笑)“服と音楽がある人の集う場”に、この店がなっていけたら…と思っています。
Interview:ema iwata

住所:富山市中央通り1-6-2
TEL:076-493-3929
営業時間:10:30~19:00(水曜休)
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